活動記録2017:蜘蛛と箒企画特別講座:「デーヴィッド・チュードアの器楽」中井悠

蜘蛛と箒では、国内外で多岐にわたる活動を行っているアーティストであり、ニューヨーク大学大学院で博士号を取得したデーヴィッド・チュードアの研究者である中井悠さんをお呼びして、特別講座を開催いたします。

蜘蛛と箒企画
特別講座:中井悠「デーヴィッド・チュードアの器楽」

開催日時:2017年7月23日(日)19:00-21:00
開場時間:18:30–
開催場所:武蔵野プレイス スペースC

料金:1,500円
定員:35名

※事前予約制 お名前、人数、ご連絡先のメールアドレスまたはお電話番号をご明記の上、aslspbank@gmail.comまでご連絡ください。

※募集を締め切りました。ありがとうございました。

 デーヴィッド・チュードア(1926−1996)は、圧倒的に卓越した演奏技術と難解な楽譜を「パズル」として解く天才的な能力によって、1950年代から60年代にかけてジョン・ケージ、ブーレーズやシュトックハウゼンなど名だたる実験/前衛音楽作曲家たちの信頼を一身に集めたピアニストとして主に知られています。しかしチュードアのピアニストとしての10年余りの活動は、半世紀以上にわたって繰り広げられたかれの長いキャリアのほんの一部にすぎません。それ以前のオルガニストとしての活躍やそれ以降の電子音楽のパイオニアとしての活動は、その重要性や影響力の大きさに比してこれまでほとんど論じられることはありませんでした。この欠落--その理由は複合的で根深いのですが--は単にチュードアが生みだした音楽に対する無理解だけではなく、演奏者としてのチュードアの類稀な能力に依存しつつもその内実を括弧入れすることで形成された実験/前衛音楽のドグマティックな言説を、それに無批判的に寄り添う研究者たちの通り一遍の見識とともに、いまに至るまで温存させてきました。しかしながら、ぼくがここ数年間断続的に行なってきた研究によって、近しいコラボレーターでさえも知らなかったチュードアの自作楽器/回路と、それらをネットワーク状に組み合わせて作り出される作品の作動方式を大方解明することができました。またそこから翻ってピアニスト、さらにはオルガニストとしてのチュードアをこれまでとはまったく別の角度から検証することが可能となりました。オルガンからピアノへ、ピアノからアンプリファイド・ピアノへ、バンドネオンそして電子楽器、さらには「孤島」に至るまで、使用楽器を絶えず持ち替え、「作曲家/演奏家」などといった従来のカテゴリー区分を軽やかに転覆させつつ、独自の音楽を作りつづけたチュードアの生涯から浮かび上がるのは、「音」と「聴取」に固執する周囲の作曲家たちの言説(そしてそれを鵜呑みにした研究者や批評家たちの認識)を実践的にも理論的にも条件づけながらも(それゆえに)顧みられることのなかった、音の生成に関わる物質的プロセス、すなわち「楽器」をめぐる特異な思考と実践です。このレクチャーでは従来の現代音楽観を揺るがすこうしたチュードアの器楽の内実を、現在執筆中で来年オックスフォード大学出版局から出版される予定の、世界初となるチュードアの研究書「Reminded by the Instruments: David Tudor’s Music」から抜粋するかたちで紹介します。チュードアの精神に習って、なるべく具体的に(つまり抽象論は後回しにして)、残された資料やデータを組み合わせながらパズルを解くように事例を解析していきます。電子回路についてももちろん論じますが、電子工学の知識があまりなくても解読作業は追えるはずです。
*チュードアの音楽を聴いたことがない方は、YouTubeにも最近アップロードされたこのブートレグの演奏がすばらしいので(再生回数が200程度だけど 笑)、まずはここからでも:https://www.youtube.com/watch?v=Ev76oaxThLc(これについてはたぶん論じる時間がありませんが、実はチュードアの生前最後のパフォーマンスです)

プロフィール
中井悠(なかいゆう)
No Collective(http://nocollective.com)のメンバーとして、ニューヨークをベースに、音楽(家)や舞踏(家)、演劇(台本)、絵本、お化け屋敷、理論(家)などを世界各地で制作。2014年にLeonardo Music Journal(MIT出版)により、いまテクノロジーを使っておかしなことをしているアーティストの一人に選出された。比較的うまくいった最近のプロジェクトとしては、ダンス作品だと思われている「Vesna’s Fall」(Judson Church, New York / Black Mountain College, North Carolina / Queens Museum など, 2014-15 [http://nocollective.com/v.html])と「House Music」(KurturRaum, Berlin / University of the Arts, Helsinki, 2014-15 [http://nocollective.com/hc.html])や、ドッペルゲンガー式室内楽「Immaculate Conception」(mise-en_PLACE, New York, 2016 [http://nocollective.com/i.html])、諸々の影響下において「影響」についての理論を構築せんとする「Writing Under Influence」(San Diego, 2017 [http://nocollective.com/text/])など。No Collectiveの活動に関するまとまった論考としては”Music and Its Double”(TDR, MIT出版, 2017)、”The End of Choreography As We Know It”(Performing Arts Journal, MIT出版, 2016)など。またインディペンデント出版社Already Not Yet(http://alreadynotyet.org)をブルックリンで共同運営、無料ジャーナルMatters of Actを毎年一冊のペースで刊行している(http://alreadynotyet.org/04.html)。制作活動のかたわら学術研究も行ない、近年はデーヴィッド・チュードアの音楽の調査に時間を費やした。その研究で昨年ニューヨーク大学大学院から博士号を取得、現在博論をベースとするデーヴィッド・チュードア論をオックスフォード大学出版局との契約のもと執筆中。チュードアが1970年初頭に作ったグループ、コンポーザーズ・インサイド・エレクトロニクスのメンバーとして、チュードアの作品もときどき演奏している。日本にいた時は東京大学大学院(表象文化論)や四谷アートステュディウムなどに所属。

蜘蛛と箒

1979年生まれ。美術家、美術批評家

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