COLLECTED LETTERS/コレクテッド・レターズ |佐藤純也、新津保建秀、鄭梨愛、松本菜々

COLLECTED LETTERS/コレクテッド・レターズ
参加アーティスト:佐藤純也、新津保建秀、鄭梨愛、松本菜々

—蜘蛛と箒のサブスクリプション・ワークス—
月額500円で、アーティストからの手紙が届く


今回蜘蛛と箒は、TALION GALLERYの協力のもと、「COLLECTED LETTERS (コレクテッド・レターズ)」と「温田山のポプリメール」という二つの新しいプロジェクトを開始します。この二つの企画は、「郵便」という設定をもとにしたサブスプリクション・ワークス(定期購読型作品)です。購読者に6ヶ月間、毎月一回、アーティストからの手紙=作品が届くプロジェクトです。

◯角3封筒に入ったモノクロプリントによる作品。
◯蜘蛛と箒からのレター

発送日:毎月25日ごろに発送(
初回は6月25日ごろ発送予定)
 ※申し込みはいつでも可能です。その月もしくは翌月から6ヶ月間、毎月アーティストからの手紙=作品が届きます。

料金:6ヶ月一括¥3,000 (送料720円)         
企画:蜘蛛と箒
企画協力:TALION GALLERY

 

—あらゆる手紙は絵葉書である…(絵葉書とは)開かれているものであり、郵便配達夫なり誰でもが手に持って読むことができるものだけれども、同時にそれを読むのは暗号を施されたテクスト、秘密のテクストとしてなのです。— ジャック・デリダ

現在はオンライン上での展覧会や映像作品の公開などの試みがさまざまな場所で行われていますが、蜘蛛と箒では「プロダクト」という条件にこだわり、郵便や手紙という形式を用いたプロジェクトを展開することにしました。これは申し込み後にリンクのページに飛んで、見たら終わり、読んだら終わりではなく、手紙が届き続ける6ヶ月間の経験が作品となるプロジェクトです。このことは、ジャック・デリダが「あらゆる文化はある種の郵便的テクノロジーと分離し得ない」といったその意味を、このオンラインが全面化した状況、コロナウィルスによって変化している私たちの日常の中で、改めて考えてみることです。

手紙とは、単に読むものではなく、「待つもの」であり、「届けられるもの」であり、「手にとるもの」であり、「開封されるもの」であり、そして「観られる/読まれるもの」であります。この遅さ、距離、モノの存在が、手紙の内容と分けられないものとしてあります。さらにいえば、手紙=作品とは、読んでそこで経験が閉じられるのではなく、次にくる手紙=作品を待つ時間へとつなげられる。そして、全ての手紙=作品が手元に残る時、それは一つの「書簡集」となります。

 

【参加アーティスト】

佐藤 純也|SATO Junya

“Gray Scale” 2018, oil on canvas, 27.3×22cm / 22.7×15.8cm
Courtesy of AOYAMA|MEGURO

「これらの時代の愛」
手紙は、季節を感じる挨拶や、友人や家族に近況を届けていた時代から、すっかりと変わりました。何かを待ち受けるような気持ちでポストを開けた経験の記憶も薄れている。そもそもそんな瞬間を体験したことがある人自体、もはや少なくなっているでしょう。今ではPCやモバイル越しで、秒ごとにお互いを確認し合うように、交わる情報はスピードと量が増大し続けています。
隔たりが必要とされる今だからこそ、何が届けられるのだろうか。
受け取ること、言葉、手紙などをキーワードにしながら、届くたびに新しい気持ちに出会ってもらえることを試みます。ある時はドローイングのような、またある時は指示書や写真のようなものがお手元に届きます。いずれにせよ、あなたにとって特別なものになりますように。

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COLLECTED LETTERS /コレクテッド・レターズ:佐藤純也

【プロフィール】
1977年宮城県生まれ。2000年多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業。現在、神奈川県の共同スタジオを拠点に国内外で活動。身の回りやインターネット、S N Sなど社会を取り巻くイメージをもとに多様な絵画作品を制作。つねに新しい展開への変化と、個展なのにグループ展の雰囲気を醸し出す幅広さがある。

新津保 建秀|SHINTSUBO Kenshu

“Untitled”,2019, Pigment print, 42.5×237.6cm
Courtesy of Kenshu Shintsubo

コロナになって家の近所をあるきながら撮ることがふえたので、先週、これに適したレンジファインダーのカメラを入手しました。今更ながらですが、カメラが軽量化することで対象との間合いがかなり変化することに気がつき、面白く思っています。今回はこの感覚と、2年前、コロナ禍がなかったころのリスボンを歩いた時にさぐった感覚をもとに、これまで訪れてみたかった街をひとり訪れ、歩いているときの時間に触れてみることを試みたいと考えています。

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COLLECTED LETTERS /コレクテッド・レターズ:新津保 建秀

【プロフィール】
1968 年東京都生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。博士(美術)。近年の主なグループ展に「さいたま国際芸術祭 2020」さいたま市 (2020)、「北アルプス国際芸術祭」大町市 (2017/ 長野 )、「カメラのみぞ知る」TALION GALLERY (2015/ 東京 ) など。

鄭 梨愛|CHONG Ri Ae

 “Vision”, 2020, 148.3×318.4×20.0cm
Courtesy of CHONG Ri Ae 撮影:上野則宏

去年の今頃は、部屋の窓から見えるのどかな景色とは裏腹に、徐々に募る不安や焦燥感と葛藤する、そんな忙しない日々だったような気がします。そのような日々のなかで、小説や詩などから触れた「言葉たち」には、とても救われ励まされたりしました。
今回はその「言葉たち」をもとに綴った短いエッセイと、それに関連するドローイングを、書簡として収めます。
書簡の、見えない他者を想像しながら書いて送るということ、また封を開け読むこと、それらの行為は、私的な空間で起こる「小さな出来事」のように思えます。今なお閉塞的な日常を余儀なくされているなか、できることならそんな「小さな出来事」を共有し、日々の可能性を探っていければと思っています。

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COLLECTED LETTERS /コレクテッド・レターズ:鄭 梨愛

【プロフィール】
美術家。2018年朝鮮大学校研究院総合研究科美術専攻修了。自身の家族史やルーツと向き合いながら、絵画、映像、インスタレーションなどによる作品を発表。近年の作品発表は、『平成美術:うたかたと瓦礫(デブリ) 1989-2015』(京都市京セラ美術館 新館東山キューブ、2021)など。

松本 菜々|MATSUMOTO Nana


Kuroshio Current(coconut), 2020
Courtesy of Nana Matsumoto
撮影:宮下夏子

机の上には、先ほど食べたビスケットの欠片が散らばっている。それはどこか夜空に光る星々の様にも見え、他よりも僅かに大きな三つの欠片は、まるで夏の大三角の様だ。

夏の夜空に一際強く輝く、ベガ、アルタイル、デネブから構成される夏の大三角は、同時に琴座、鷲座、白鳥座を構成する星の集まりでもある。古代の人々が動物や物に見立て、神話や逸話と共に語ったその星々は、実際には岩石やガスのような物質でできた恒星であり、私の眼前に散らばっている物も小麦粉と砂糖等を練り込んで焼かれたビスケットの欠片でしかない。時として因果的にも非-因果的にも結びつく多義的な様相は、単に人が恣意的に物語や形象を付与しているに過ぎず、あるいは想像でしかないのかもしれない。 

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COLLECTED LETTERS /コレクテッド・レターズ:松本 菜々

【プロフィール】
1986年千葉県生まれ。2010年東京造形大学大学院造形研究科造形専攻美術研究領域修士課程 修了近年の展覧会に、2020年「雨足に沿って 舵をとる」アキバタマビ21(東京)、2017年「Post-Formalist Painting」statements/駒込倉庫(東京)など。

 

 

蜘蛛と箒

蜘蛛と箒(くもとほうき)は、 芸術・文化の批評、教育、製作などを行う研究組織です。

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