【活動記録:2008】第2回 「ASLSP/画集夜話」のレポート (2008年10月4日)

※蜘蛛と箒の前身となるASPSLの活動記録です。

 Vito AcconciFelix Gonzalez-Torresの画集・映像作品を閲覧しながら議論を進めた「画集夜話」が10月4日に行われました。

 Vito Acconciの70年代前半に撮られた映像作品などで示される暴力性や身体性と、Felix Gonzalez-Torresの作品・展示における徹底された態度、その必然性とはそれぞれいったいどのようなものなのかについて中心的に検証していきました。
 Acconciは、美術というジャンルや業界が対象ではなく、生活や社会の基盤となっている核の部分・構造の意識化とその変革として、空間や身体性が扱 われている。それに対してFelix Gonzalez-Torresは、美術(ジャンル)やメディア内部に向けられ、作品のプログラミングが行われていることが示されました。つまり、 Acconciの場合、建築など空間における内と外の問題が行為や身体に対しての大きな意味の変容と捉えられるのに対して、Torresの場合は、作品が 美術館の外に展示されようとも、メディアや社会システム、もしくはプライベートな問題の内部に安定して収まっているように戦略的に作られています。
 ここから見えてくることは、Acconciの作品(とくに70年代くらい)は、変革・変容の可能性として作品が体現されているのに対して、Torres の作品はペシミスティックであり、変革というよりも確保や潜伏としての可能性に意識を徹底させているという意見が出ました。
 そこから、Acconciが建築やパブリック・アートとしてのプロジェクトに転向していくこと、90年代の現代美術に決定的な影響を与えたTorresの限界と可能性が、現在どのように見えているのかについて議論していきました。

 最後にこの二人の作品にはっきりと感じられる社会性/政治性に対する明確な対象性(コンセプチュアルな意識)は、作品の完成やクオリティーを決定する基 盤となりえている。それに対して私たちは現在、何を対象とし、何を基準として、作品の完成、クオリティーを決定しているのかについてそれぞれの立場から発言がなされました。

 

蜘蛛と箒

蜘蛛と箒(くもとほうき)は、 芸術・文化の批評、教育、製作などを行う研究組織です。

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