蜘蛛と箒企画|連続講座「つくる人のための批評入門」 講師:石川卓磨
〈つくる人のための批評入門〉
募集定員に達しましたので、応募を締め切らせていただきます。
ありがとうございました。
講座概要
社会や未来の不確定さが増しているなかでは、制作や活動を支える具体的な学習と思考が重要となります。漠然と個人に備わっているセンスだけでは、長期スパンで活動を行う場合、乗り越えられない壁が存在します。現在は短期間で社会の価値や状況が大きく変動する世界になっており、この変動を乗り越えるためには、自分の力で問題解決や選択を行っていかなければなりません。
批評とは多くのジャンルに存在し、専門性、目的、機能、読者などのあり方もさまざまです。本講座で学ぶ批評とは、芸術や文化の制作、活動、企画、運営などを行っている人、行いたい人にとって必要となる能力に特化しています。「つくる人」とは、アーティストやクリエーターなど作品を作る人に限らず、芸術・文化に関わるなんらかの生産的活動をする人に向けています。
語学では、ライティング、リーディング、スピーキング、リスニングの技術を習得するうえで、それぞれ異なる学習や練習が必要であるように、本講座では、見る、読む、書く、対話する、をテーマとし全4回で批評の技術を学んでいきます。批評を書く技術に限定せず、総合的な能力として学習します。この方法により柔軟で応用力のある技術として批評を学ぶことができます。
批評はそれ自体を表現活動そのものにも活かすことができます。ブレヒト、ゴダール、ギー・ドゥボール、ゲリラ・ガールズなどのように批評行為を表現活動に展開していったアーティスト、クリエーター、批評家、キュレーターは歴史上に存在します。現在はeデモクラシーという新しい活動も盛んになっており、「つくり手」の意味はかつてなく幅広いものになっています。
学びには模倣するという意味が含まれています。つまり学びは他者の仕事の重要性を自分の課題と区別せず共有する姿勢が前提となっています。他の人の仕事を理解でき、相手の話に耳を傾けられる力があれば、課題や可能性を他者と共有できるので、孤独にはなりません。分析力は自分の仕事を構造的に理解させ、それらを展開させる力にもなります。読書の技術は、世界や歴史と制作行為や活動の接続を検証するものとなり、現在がどのような時代であるかを認識するためのコンパスにもなります。批評の基礎的技術を学びながら、現在必要となる知識をインストールできる講座です。
各回概要
※本講座は、講座時間外の課題が出される場合があります。
第1回 見ることの授業(基礎編)
デッサンを学ぶこととは、見ることや在ることの不確かさ、見ることと知ることの関係や問いを学ぶ経験でもあります。日常にある事物を観察することで、私たちが見ているものや行為とは何かを考えます。1つの作品からどのくらい情報を引き出せ、議論を作れるかという分析の試みの後、環世界と呼ばれる理論を応用したワークショップを行います。
第1回 見ることの授業(応用編)
見ることの分析を、制作・編集に応用していきます。ここでの制作・編集とは、制作者だけでなく、複数の立場の人に広く有用性のある技術として課題を行います。画像を解釈し、編集者のように写真を選択し提示することで、批評的視点を提示する方法を学びます。Photoshopなどの画像編集ソフトがなくても、スマートフォンやPCがあればできる課題です。
第2回 読むことの授業(基礎編)
批評や研究者の文章を読むことは簡単ではありません。また、感覚的にだけ読んでいると学べないことも多くあります。批評理論がある程度読者にインストールされている前提で書かれた本を慣れないうちから読むことで、挫折してしまうこともしばしばです。読書についてのレクチャーをした後、受講生のレベルに即した短い論考を取り上げ、みんなで検証しながら読んでいくことで読書の技術を学びます。単に読むだけでなく、要約、抽出、比較などの課題を行います。
第2回 読むことの授業(応用編)
批評を批評的に読むことをテーマにした回です。書評についての講義後、論考のレビューを行います。全員で書かれたレヴューを読む作業を通し、自分の読書や考え方を対象化します。全員が1つの論考の情報を共有し、それについて各人がレヴューを書き、議論することで、読むことの技術をより深くしていきます。
第3回 書くことの授業(基礎編)
美術批評とは、美術批評家だけが書くわけではありません。美術家、詩人、思想家、ジャーナリスト、科学者などによって書かれたものが存在します。さらに批評には、印象批評、フォーマリズム批評、制度論、伝記的批評、歴史的批評など、スタイルや形式も一様ではありません。
また、批評は、作家のことを十全に知り尽くしていない状況や、専門分野でない事柄でも、信用性を有した文章を書けなければいけません。その意味では研究者が書く論文とは異なります。批評についての講義をした後、作品批評についてのワークショップを行います。
第3回 書くことの授業(応用編)
批評では、歴史を学ぶことが不可欠です。課題として、特定の十年間の特定の芸術・文化をテーマにしたレポートを作成してもらいます。各自のレポートを発表した後、その時代についてディスカッションを行います。その後、改めて、自分のレポートをブラッシュアップしていく授業になります。時代を学ぶということがいかなることかを学ぶことができます。
第4回 対話することの授業(基礎編)
デザインの世界ではモノからコトへと言われるようになり、現代アートではソーシャル・エンゲージド・アートや地域アートなどが注目され、政治やデモクラシーへの関心が高まることで、対話やディスカッションは欠かせないものとなっています。またそういった場や記録の形式自体に対する実験的な試みも盛んに行われています。ここでは表現活動において問われる制度論に着目し、社会的な事例を取り上げ、対話についてのワークショップを行います。
第4回 対話することの授業(応用編)
西洋哲学の基礎をなすプラトンは、戯曲のように対話形式で哲学書を書いています。歴史的にみると多くの思想家が、思想や批評を目的として対話形式の作品を発表してきました。サルトルは、実存主義を代表する哲学者ですが、同時に非常に優れた小説家・劇作家でした。またブレヒトは優れた劇作家ですが、芸術批評や社会批評も書いており、批評としての対話劇を作りました。この回では、ポットキャストなどを念頭に置いた音声による放送劇を作ることを試みます。劇を目的とするのではなく、批評として対話劇を作るワークショップです。
【講師プロフィール】
石川卓磨:1979年生まれ。武蔵野美術大学大学院造形研究科卒業。美術家、美術批評家。主な評論に「カエサルのものはカエサルに!――鈴木清順における「ルパン三世」と「浪漫三部作」」(『ユリイカ2017年5月号 特集=追悼・鈴木清順』、青土社、2017)、「ポストアプロプリエーションとしての写真」(『カメラのみぞ知る』[図録]、ユミコチバアソシエイツほか、2015年)などがある。主な展覧会に「第9回恵比寿映像祭『マルチプルな未来』」(東京都写真美術館、2017年)、「教えと伝わり|Lessons and Conveyance」(TALION GALLERY、2016年)、AIRS企画vol.5石川卓磨「真空を含む」(国際芸術センター青森・ACAC AVルーム、2016年)などがある。
※本講座は原則4回連続で参加できる人を対象としていますが、1回から受講可能です。
開催日 | 基礎編 第1回5月30日(土)、第2回6月27日(土)、第3回7月25日(土)、第4回8月22日(土) 応用編 第1回6月13日(土)、第2回7月11日(土)、第3回8月1日(土)、第4回8月29日(土) |
開催時間 | 19:00-21:00(延長の場合は21:30) |
受講費 | ※新型コロナウィルス感染症対策として、原則すべて講座をオンラインで実施することになり、通常の受講料より割引価格になっております。 基礎編:全4回受講(1講座120分×4回)7,200円 基礎編+応用編:全8回受講(1講座120分×8回)14,000円 〈各回の個別受講の場合〉 1~2回受講の場合は、1講座につき2,000円 3回以上受講より1講座1,800円 単発受講をご希望の場合でも、応用編の場合は基礎編をご受講ください。 例)書くこと(応用編)の受講をご希望の場合は、書くこと(基礎編)もご受講ください。 基礎編の単発のみはご受講可能です。 |
入会費 | 年間1,000円。受講のためには入会が必要となります。有効期間は20年度になります。 他の蜘蛛と箒のイベントで割引制度を設ける場合があります。 |
支払い方法 | 銀行振込 もしくは PayPalになります。 |
オンライン講座で使用するアプリケーション | Zoomを使用します。 |
定員 | 15名程度 |
申し込みフォーム | https://form.os7.biz/f/fc3d276b/ ※自動返信メールではありませんので、返信が遅れる場合がございます。 |
講座に関する質問などは下記までお問い合わせください。
Email:aslspbank@gmail.com