蜘蛛と箒企画|連続講座「世界=現実の脱構成としての芸術(後編)」 講師:沢山遼

世界=現実の脱構成としての芸術(後編) 
講師:沢山遼

【講座の概要】
「芸術は世界を変えられるか」という解けない問いがある。しかし、近代以降の芸術が、世界=現実の模造、模倣をやめるという明確な意志をもって制作されたとすれば、現実それ自体としての芸術は、世界の階層秩序を脱構成―無効化する威力に満ちたものになる。絵筆のたった一振りが、取り戻すことのできない出来事を世界に刻み、別の秩序を生成する。そこでは、世界は変えられるか否か、という視点ではなく、その変革はどのように(どのような思想のもとに)生じるのか、を思考する視点こそ重要となる。この講座では、芸術の脱構成=世界の脱構成という見取り図のもとに、多数の芸術実践とそこに付随する思想を検討し、近現代の芸術の可能性を探ってみたい。

【各回の概要】

第1回「イサム・ノグチのスケール」

イサム・ノグチには、コンスタンティン・ブランクーシとバックミンスター・フラーという二人の先生がいた。あるときノグチは、フラーに宛てた手紙のなかで「私の仕事において、ブランクーシに由来すると思われているものは、すべてあなたの影響によるものです」と書いている。事実、ノグチは、芸術家ブランクーシと発明家フラーを媒介する彫刻を多く手がけた。芸術と科学のボーダーを超えた三者の系譜から立ち上がるのは、最小限の単位を連続させ、無限に伸張・展開可能な事物のデザインを行うという思考だ。それは、当時のアメリカにあった美術のミニマリズムとは別種のミニマリズムを示している。さらにノグチの作品展開を分析すれば、この「別の」ミニマリズムの展開は、ノグチが60年代のアース・アートにはるかに先駆けて「大地を彫刻する」という構想を得たことと緊密に関係することがわかるだろう。



第2回「網状都市論」

ポップ・アートの歴史において、いわゆるブリティッシュ・ポップの発信源となったのは、Institute of Contemporary Arts(ICA)を母体とするインディペンデント・グループである。だが、彼らの活動を、たんにポップの起源に位置づけるだけでは不十分だろう。そこには、ポップの舞台となる現代都市空間を、非合理性、非統一性、偶発性、即興、エネルギー、生成、流動性、活動性などの諸要素が活発化する場所として読む姿勢がみられる。つまり彼らは、ポップの震源として、まず、ポロック/アンフォルメルの絵画に見られる不定形な流動性を都市空間に接続しようとした。この動きは、当時、ICAに参加していたアリソン&ピーター・スミッソン夫妻とレイナー・バンハムによるブルータリズムや、アーキグラムのリヴィング・シティ構想など同時代のイギリスの前衛建築運動と合流する。そこから、「網状都市」と形容すべき、ロベルト・マッタ、シチュアシオニスム、コンスタント・ニーヴェンホイスなどとの多様なネットワークが構築される。そこで賭けられているのは、ポロックを、絵画ではなく都市空間上でやることは果たして可能か、という問いである。



第3回「SFとしてのコンセプチュアル・アート」

コンセプチュアル・アートは概念芸術と訳される。だが、コンセプチュアル・アートを、概念を操作対象とする芸術とみなすことは、むしろ「概念(コンセプト)」なるものがあらゆる事物や素材に先立って存在するかのような誤謬を生み出してしまうという点で、有益ではないだろう。むしろ、コンセプチュアル・アートが操作しようとした(あるいは敵対した)のは、芸術生産が行われ、作品が発表されたあとに批評的言説が介入するという社会的な流通の回路そのものであり、そして、時間や空間を連続的で不可逆的、かつ分節不可能なものとする(ベルクソン的?)芸術哲学である。コンセプチュアル・アートは時間、空間の配置換えを行い、芸術家が盲目的な状況のなか、未知のものに向かうという物語を破壊・脱構成する。同時代のSF小説のように、未来は、先験的で先取り可能なものとして扱われる。コンセプチュアル・アートと呼ばれるものの、このような可能性を問う。



第4回「実験工房/福島秀子」

2013年に開催された「実験工房 展──戦後芸術を切り拓く」が画期的だったのは、瀧口修造ひきいる実験工房という集団の活動の全容を開示したのみならず、実験工房が、およそ展覧会という場に似合わず、物体的な事象に頓着しない活動形態を伴っていたことを示した点にある。実験工房が行った音楽やダンスなどの芸術表現は美術作品にも当然還流し、インターメディア的な実践が行われる。そうした諸ジャンルの相互交流においては、一貫して、記譜、写像、模型、キネティックな運動などがもつ可能性が共有されていたように思われる。言い換えれば、目に見えない構造を、異なる支持体、異質な表現形式に転写する可能性である。作品ないし事物が一回的で唯一的な、閉じられたものであるという前提はそこには存在しない。そのような見地から、実験工房に参加した画家・福島秀子の絵画を検討してみたい。



【講師プロフィール】
沢山遼

1982年生まれ。武蔵野美術大学大学院造形研究科修士過程修了。美術批評家。2009年に「レイバー・ワーク──カール・アンドレにおける制作の概念」で『美術手帖』第14回芸術評論募集第一席。武蔵野美術大学、首都大学、名古屋芸術大学等非常勤講師。主な論考に「ニューマンのパラドクス」田中正之編『ニューヨーク 錯乱する都市の夢と現実(西洋近代の都市と芸術7)』竹林舎、2017年。「ウォーホルと時間」『NACT Review 国立新美術館研究紀要』第4号、2018年。「都市の否定的なものたち ニューヨーク、東京、1972年」『ゴードン・マッタ=クラーク展』カタログ、東京国立近代美術館、2018年など。


※本講座は原則4回連続で参加できる人を対象としていますが、1回から受講可能です。

開催日 第1回 11月17日(日)、第2回 12月15日(日)、第3回 1月12日(日)、第4回 2月2日(日)
開催時間 18:30-20:30(延長の場合は21:00)
受講費 全4回受講(1講座120分×4回)8,000円

〈各回の個別受講の場合〉
1~2回受講の場合は、1講座につき2,300円(実費を含む)
3回受講より1講座2,000円。

〈複数講座をご受講に際しての割引〉
2講座受講 15,000円、3講座受講 22,000円、4講座受講 29,000円、全講座受講 35,000円
開催場所 武蔵野プレイス
(武蔵野市境南町2-3-18 tel 0422-30-1905
アクセス:JR中央線・西武多摩川線「武蔵境駅」南口下車、徒歩1分)
入会費 年間1,000円。受講のためには入会が必要となります。有効期間は19年度になります。
他の蜘蛛と箒のイベントで割引制度を設ける場合があります。
定員 15名程度
申し込みフォーム https://form.os7.biz/f/9f809944/
※自動返信メールではありませんので、返信が遅れる場合がございます。

講座に関する質問などは下記までお問い合わせください。
Email:aslspbank@gmail.com

 

 

 

 

蜘蛛と箒

蜘蛛と箒(くもとほうき)は、 芸術・文化の批評、教育、製作などを行う研究組織です。

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