蜘蛛と箒のレビュー・プロジェクト:平岡希望評
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2023年5月16日
2023年5月8日
堀江和真さん『“にゅい”な部屋』(オルタナティブ掘っ立て小屋『ナミイタ-Nami Ita』,~5月15日 ※火水木休み)。
画面にレモンイエローが載せられた《やせる絵画》、それが収められた額縁(にゅい家具)の裏板もレモンイエローで、真下の棚に並ぶ、造形教室の端材を用いた《ペインティングビルド》の内ひとつも黄色く塗られ、さらに左手には黄色い額があって…と、数珠繋ぎの如く原色が連なる空間。そして色だけでなく時間も張り巡らされていて、《やせる絵画》それぞれに書き付けられた日時、例えば「2023 3/29 13:20~13:28」と「2023 3.29 13:28-13:34」が連続しているように、作品同士の前後関係が、制作年に留まらず、分単位でうかがい知れる。そして、鉄の支持体をプラ板で埋め尽くした《イメージを置く》が、ちょうど1年前のグループ展「いとまの方法」で、会場の鉄扉が同じように(一部を)覆われていたことを思い出させ、《にゅい家具》の並んだこの空間自体が、堀江さんのスタジオを想像させ…と、作品をよすがに異なる時間・空間が繋ぎ合わされている。そんな展示空間は、かわるがわる訪れるお客をもてなす部屋でもあり、訪問者=モデルを撮影するセットでもある。そして観客と対話する堀江さんは時にセラピストのようで、遊戯室・カウンセリングルームでもあるのかも知れない。
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2023年5月1日
高橋大輔さんオープンスタジオ(会期終了)。
未発表の最新作から、干支ひと回り分は離れた過去作までが、時系列ではなく一挙に飛び込んでくる空間。
はじめて個展を拝見したのは「青いシリーズ / どうして私が歩くと景色は変わってゆくのか」(second 2.,2021年)で、もったりとしたクリームを、筆で掬っていくかのようにのせられた青の表情に惹かれた。同連作の一作が今回もあり、改めて見ると、新雪に足跡をつけていく時、雪からも押し返されては崩れていくみたいに、ひとつひとつの運動の連鎖として生まれたことが感じ取れる。絵の具と絵の具、あるいは支持体とのシーソーめいたやりとりは、新作群でも追究され、一筆置くごとに変容していく画面のダイナミズムをそのまま留めている。一本の線がどのように引かれたのか、それが、全体とどう関係するのか、目をレコードプレーヤーの針のごとく落としてなぞっていくことは、絵を見る楽しみだと思うけれど、そうした醍醐味が凝縮されているよう。